夏、始まる



『海だーーっ!!!』
「海やーーっ!!!」

夏休み。
どうにか全員赤点を免れたわたしたちは、夏休み最初の土日を使って一泊二日でハッチの別荘に来てる。
有昭田家は生粋のお金持ちらしくて、別荘が全国各地にあるとか。
今日はそのうちのひとつ、海辺の別荘を貸してもらい泳ぎに来たの。
海の蒼がとても鮮やかで、空の蒼との境目がわからないくらい。
これぞ夏って感じ。
わたしとひよ里と白はすでに海に飛びこんで、はしゃぎまくっている。

「ひゃー!つめたーい!みんなもはやくおいでよーう!!」
「バカ野郎!水かけんじゃねぇ、白!」
「ふーんだ!あれぇー、拳西もしかして、水怖いのぉー?」
「んだとこの野郎!」
拳西が白に向かって思いっきり水をかけた。
…黙ってれば仲良さそうなカップルに見えるんだけどなぁ…
完全に小学生だよ、あれ。
「うぉーい、魚とれたぜローズ、ハッチ!今日の飯な!」
「すごいじゃないかラブ!その調子でもっと頼むよ?」
「おう任せろ!ってかお前らパラソルからそろそろ出ろよ!」
「嫌だよ!僕のこの美肌が焼けちゃうじゃないか!」
「オメーなんで海来たんだよ!」
「まぁまぁ、こんなとこまで来て喧嘩しなくても…楽しみマショウ?」

みんなそれぞれの楽しみかたをしてる。
わたしとひよ里は泳ぎまくって、白と拳西は水のかけあいっこ(そんなかわいいもんでもないけど)、ラブが魚とるのを楽しそうに見守るローズとハッチ。
なんだかんだ言うても楽しんでるなぁ、みんな。

あれ…?
真子とリサがいない。
どこ行って…あ、いた。

「水着ギャルっておらへんもんやな」
「まァここハッチのプライベートビーチやしな」
「クソッ…アタシの海での楽しみゆうたら水着ギャル見て目の保養することやのに…」
「ひよ里と白と名無しがおるやんけ」
「ひよ里と白はガキやろ。まぁ名無しはスタイルエエけどな」

あぁ、ギャル鑑賞ね。
真子は男の子だからわかるけど、リサまで…
リサは自分だってなかなかにスタイルいいでしょう。
そういえば、真子といえば…
真子、最近何か変な気がするんだよね。
テスト終わってから。
や、普通に話しはするんだけど、目もあんまり合わせてくれないしそっけない気が…
うーん、自意識過剰かな?
まぁ真子だって思春期の男の子だもんね!
わたしに言わなくたって色々あるよ、きっと。
見守ってあげようじゃない。ふふ。



「第一回スイカ割りたいかーいっ!!」
「よっしゃ、ハッチいったれ!」
「うぅ…な、何も見えまセン…」
『あー、ちがうちがう!もっとこっち!』
「こっちってどっちだよ、わかんねぇよ」

ドコッ

『あー、残念!あと50cm右だった!』
「あの…名無しサン、こっちって言われてもわかりマセン」
「アホか。ハッチ、名無しにそないなこと言うたって頭良うないから意味ないで」
わたしたちがスイカ割りをしてたら、パラソルの下でローズと一緒に休んでた真子が口出ししてきた。
むっ、失礼だな。
わたしの頭のレベルは真子と同じでしょーが。
しかもまた目を合わせないときた。
全くもう思春期の男の子めんどくさいなー!
好きな女の子でもできたのか?
それならしょうがない、見守ってあげよう。ふふ。
あ、やだ、思わず顔がにやけちゃう。
「…なに笑っとんねん。怒れや」
真子が白い目でわたしを見てくる。
『ふふふふふふ、真子?ちょっとおいで?』
わたしは真子を手招きして、みんなからちょっと離れたところに呼び寄せた。
「なんやねん、何がしたいねん」
『真子くん、思春期なんだよね、うん』
「はあ?」
ずいっと真子に顔を近づけて、こしょこしょ話をするような小さな声で囁いた。
『わたしは思春期の君を応援するよ!きっと好きな人ができたんだよね。頑張れ?悩みならいつでも聞いてあげるから!』
「…はぁ…」
真子がため息をついたかと思ったら、

ゴンッ

と鈍い音がして、わたしの頭に鈍痛が走った。
頭突きされたみたい。


『い….いった!!!何すんの真子!』
「名無しがアホすぎて嫌んなったんや」
『なんでー!間違ってないでしょ!?』
「勝手に妄想してろや、ボケ」
『はぁー!?このハゲ!!』

それだけ言うと、真子はスタスタ歩いてパラソルに戻ってしまった。
もー!
せっかく悩み聞いてやろうと思ったのに!
ハゲなうえに生意気なんだから!
かわいくないなぁ全く!


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